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ヤクザの事務所に監禁されたけど最終的に金を回収した話

武勇伝、武勇伝、武勇デンデンデデンデン。

 

当時、オリエンタルラジオが「あっちゃんかっこい~!」なんて言って武勇伝でブレイクしていた頃、一人の男が歴史に残る武勇伝を作りました。

 

東京に上京して3年目の夏。21歳。

当時の僕は大学を数カ月でドロップアウトし、仕事と言えば居酒屋やカラオケ、レコード屋の店員で食いつないでいました。

 

その日はクラブで店員兼警備員。

お酒を作ったりしながら悪さしてる奴はいないかウロウロ歩き回ったりするやつ。

同僚は僕以外ほぼ全員黒人というソウルフルな職場。

 

そんなある日、店内でケンカ。

殴り合いのケンカなんて珍しい。

駆けつけてみれば25歳くらいのB-BOYと一見クラブには不釣り合いなビジネスマンが小競り合い、というか一方的にビジネスマンがB-BOYをボコボコにしている。

 

そこは柔道2段、パンクラス(格闘技)のジムにも出入りしてた僕が数分で圧制。

格闘技経験を買われて自給2000円の男。負けるわけにいかない。

 

事情を聞けばビジネスマンの女にB-BOYがちょっかい出したとか出してないとかよくある話。

 

どっちが一方的に悪いなんてことはなかったんですけど、ビジネスマンが店内のグラスやボトル、テーブルを破損したので、弁償請求することに。

 

しかしビジネスマン、手持ちが無いとのこと。

「払えない」「帰すわけにいかない」「払えない」なんて押し問答をしてたらビジネスマンが折れて

「ここに請求書を持ってこい」と名刺を出してきた。

名刺の名前と免許証の名前が一致したので、その日はひとまず帰すことに。

 

【なんとか企画】とか、そんな名前の社名。

住所は東新宿

「自分、行くっす。大丈夫っす。サクッと回収するっす」

軽い気持ちで店長に告げて、翌日、早速訪問。

オフィスビルかな?と思いきや、一見、普通のマンション。

 

 

 

 

インターホン。

 

 

 

 

 

男「…………どちら様?」

僕「請求書をお持ちしました!」

男「…請求書?」

僕「はい、先日そちらの従業員がうちの店内で暴れまして。その際の破損した商品のお金です」

男「いくら?」

僕「4万円です」

男「お兄ちゃん、一人で来たの?」

僕「……?…はい、そうですけど?」

 

僕が相手の乱暴な言葉使いにイライラし始めた時、ようやくドアが開かれる。

 

 

出迎えていただいたのはビーグル犬が刺繍されたスウェット(ご存知、ガルフィー)を着こなした男性。

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

一瞬で本能が(おいおいおいおいこれはヤバイぞヤバイぞ)と訴えてくる。

一気に全身の毛穴が開き心拍数が上がるのを感じた。

 

 

ガラスの灰皿、黒い革のソファ、金庫、閉ざされたブラインド。仁義なきアウトレイジ

 

 

ガルフィー「とりあえず座りなよ」

僕、言われた通り床に座る。無論、正座。

 

 

ガルフィー「で、何しに来たって?」

僕「え、いや、あの、ドゥフwwwwいえ、お金wwwドゥクシww」

 

 

てんぱる僕。 おもしろがるガルフィー。

 

 

ガルフィー 「おい、若い兄ちゃんがお金くださいって言ってきてるぞー!」

 

 

口コミでゾロゾロと奥から出てくるヤクザさん達。

それこそ安くて美味しいと食べログで評判のラーメン屋くらい人が来た。

 

 

もう生きた心地がしなかった。

これまで経験した中で一番ビビっってた。

手とか小刻みにずっと震えていた。

 

 

「何歳だ?」「なんで一人で来た?」「普通の会社だと思ったか?」「アホなの?」

僕、質問攻め。

でも、そこは長年体育会系の世界に身を置いて来た身。

「21歳でざいます」「お金を頂戴したく参上しました」「おっしゃる通りアホです」

と21歳にしては違和感があるくらい丁寧かつハキハキとした受け答え。

 

 

そして、しゃべってるうちに(これはいきなり殴る蹴る詰める沈めるの展開はなさそうだな…)と冷静さを取り戻す。

冷静になると、周りがよく見えてきて、

コイの刺青が入っている人、伸びかけのパンチパーマ、スキンヘッド。俳優?と思うくらいかっこいい人もいた。

 

そして(この人たちは殴ったりしてこない。遊んでるだけだ)と確信すると

 

 

僕「いや、あの、しかし、僕も手ぶらでは何と言うか、帰りずらいです」

と 交渉をスタートさせる。

 

 

 

 

 

その時、

室内に響くインターホンの音。

 

 

 

ドアモニターを見に行ったパンチパーマが大きい声で「オヤジが帰って来たぞ!」

 

 

 

走る緊張感。

 

 

 

空気が一瞬で張りつめた。一斉にドアの前に1列に整列するヤクザ達。

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕も、整列した。

 

 

 

 

 

コイの刺青、パンチパーマ、僕、スキンヘッド、ガルフィーの順だったと思う。

 

 

ウサギには追われれば逃げる本能があり、猟犬には逃げるものを追う本能がある。

同じことだ。整列には並ぶ。

 

 

知っていた。

僕が整列した時に両隣のパンチパーマとスキンヘッドが一瞬こっち見て

 

 

 

「ん?」「あれ?」

 

 

ってなってたのを。

 

 

 

 

開かれるドア

 

 

 

 

でかい初老の男が入って来ると同時に発せられる大きな挨拶 

全員が声を合わせて「ご苦労様ですっ!」

同時に、おじぎ。

ヤクザのおじぎは美しい。

 

無論、僕も挨拶した。やや遅れ気味に。

6年間様々な武道や格闘技をやってたから挨拶とかは特に得意とするところだった。

 

親分、脚が悪いのか左脚を引きずるように、ゆっくりと部屋に入って来る。

 

一列に並んだヤクザ達は目の前にオヤジが来るタイミングで再度

「ご苦労様です!」「ご苦労様ですっ!」って1人ずつ挨拶。

 

 

コイの刺青「ご苦労様です!」

オヤジ「おう」

 

 

パンチパーマ「ご苦労様です!」

オヤジ「おう」

 

 

僕「ご苦労さまでございますっっっ!!!」

オヤジ「おう」

 

 

スキンヘッド「ご苦労様です!」

オヤジ「………ちょっと待て」 

 

 

 

 

オヤジ、2歩ほど戻り僕の前。

 

  

 

 

オヤジ「……誰だっけ?お前」

 

 

 

 

オヤジ、当然の疑問。

 

 

 

自分の組にヒップホッパーなんかいない。

当時の僕ときたらコーンロウという髪型で。

洋服は今にも「マジ親とダチはリスペクトだメーン」って言いそうなファッション。

オーバーサイズのTシャツ、片足だけまくり上げた極太デニム、足元はティンバーランド

 

 

 

それで、その後なんですけど、

オヤジから「ヤクザの事務所に金をもらいに来るバカがどこにいるんだ」とゴルフのパターで頭を

「ポーン、ポーン」とリズミカルにはたかれながら説教され。

「二度と来ません。お金もいりません」と誓約書を書かされ。

 

 

 

「さっさと帰れ」と。

 

 

 

 

 

これまでに、こんなに嬉しい「帰れ」を僕は知らない。

 

 

その後の僕といえばまずは壊れたイスと割れたグラス、ボトル代金をこっそり自腹で弁償し

「単身でヤクザの事務所に乗り込み金を回収してきた。さすがに30人のヤクザに囲まれたときは五体満足では帰れないと覚悟した。でも組長が話の分かるやつだった。うちの組で面倒を見てやると言われたが断ってきた」

という武勇伝を事あるごとに言いふらしましたとさ。

 

 

 

 

 

結局、何が言いたいかと言うと、敬語と挨拶は超大事ってことです。 

 

おしまい