警察と僕の100年戦争

先日、何年ぶりかで職質されました。
 
会社の後輩と寿司屋で飲んで、まあまあ遅い時間になっちゃったんですけど、飲み足りなかったのでもう1軒飲みに行って、たぶん夜中の3時は回っていたと思うんですけど。
 
駅前で警察官に「お兄さんちょっといいかな」と。
 
僕は警察官が嫌いです。
苦手なのではなく、嫌いなんです。
 
もう12年か13年も前の、ある吹雪のひどい日でした。
僕の実家は1年の3分の1は雪に埋もれているような豪雪地帯です。
帰省中、夜中にお腹が空き、車に乗って吹雪の中を車でコンビニに行った帰り道でした。パトカーが路肩に停っていました。様子がおかしく、どうやら、取り締まりではなく雪のわだにはまってしまい、立ち往生したようです。
僕が乗っていた車は日産のテラノ(懐かしい!)という大型の4WDでした。猛吹雪の中僕は車を降り、雪まみれになりながらパトカーと僕の車を専用のワイヤーで繋ぎました。慣れない作業でしたので1時間はかかったと思います。
車に乗り込みゆっくりとパトカーを雪のわだちから救出しました。
再度車から降り、ワイヤーを外してるとき、若い警察官は若い僕にこう言いました。
 
  
 
「今、シートベルトしてた?」
 
と。
 
いやいやいやいや、今言う?それ。
いいじゃないですか、パトカーを雪のわだちから救い出す数メートルですよ?
雪まみれになりながら、白い息吐きながら、手を真っ赤にしながら助けたじゃないですか?
 
いいですよ、現にしてなかったし、シートベルト。パトカーを救い出すことで頭いっぱいでしたからね。切ってくださいよ違反切符。でもね、返してください。僕の時間返してくださいよ。
 
 
 
それ以来ね、大嫌いなんですよ。
警察官が。
 
 
20代の僕の見た目があんまり大人しくないからですかね?

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↑20歳くらいに東京で独り暮らししてたころ
 
僕、動物がめっちゃ好きで、東京で独り暮らしをしてた頃に、近所に住んでいた身寄りのないおばあちゃんの家の犬の散歩したりしてたんですよ。
もう、散歩するたび、職質。「君の犬?」って。
 
とにかくその後の人生も警察官とは相性の良くない人生でした。
  
いい人がいることは百も承知なんですけど、なるべく関わらず生きてきました。
 
僕サイドも警察のやっかいになるような事件を起こさず無事に32歳になったんですけど、先日、10年ぶりに職務質問されました。
 
駅前で「ちょっといいかな」と。
 
びっくりして、振り向けば、警察官。体格のいい、50歳くらいの警察官だったと思います。
 
「何してるの?酔ってる?」と。
 
別にやましいこともありませんし、一人の大人としてお酒を飲んで、家に帰っている途中でした。
ただ、それだけでした。
なので、少し面倒でしたし、早く帰りたかったし、何よりも警察官嫌いな気持ちが前に出てきて、小さなウソをつきました。
 
「仕事の帰りです。飲んでないので酔ってません。」
 
しかし、警察官はプロでした
 
警察官「はい!お酒飲んでる人はいませんか!?手を挙げて!」
 僕「飲んでいないのでありますっ!!」(敬礼しながら)
 
0.2秒で酔っていることがバレました。
 
でも、それだけでした。
正直、ヘベレケに酔ってたんですけど、身分を明かし、仕事して、お酒飲んで、上機嫌で帰っている途中だと分かっていただき、すぐに解放してくれました。
 
帰り際、すごく気になったことがあったので、警察官に質問しました。
 
「あの、ところで、何で僕のこと職務質問したんですか?」と。
 
だって、その日はスーツ着てましたし、真夜中とはいえ駅の周辺には僕より怪しいやつなんか沢山いましたし、そこが少し納得できなかったのです。
 
警察官の答えはシンプルでした
 
「警察官としての…長年の…勘かな」と。
 
これぽっちも納得できない答えでしたが、すごく説得力のある答えでした。
 
何が言いたいのかと言うと、どれくらい仕事をすれば「長年の勘」が説得力を持つのかな、ということです。僕は今32歳で、社会人としてがむしゃらに10年働きましたが、まだまだ僕の「長年の勘」は説得力を持ちません。
あとどれくらい経験値を積んで、修羅場をくぐれば後輩が僕の「長年の勘」で納得してくれるのかな、早くなりたいな、と感じた出来事でした。
 
 
………
 
 
その二日後のことです。
仕事で遅くなり、今度はシラフでトボトボと歩いていると、駅前の交番に同じ警察官がいました。
 
警察官は僕を見ると、口元をニヤリとさせ
「今日も遅くまでお仕事ごくろうさまです」と敬礼してくれました。
 

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 危うく惚れてしまうところでした。
 
そして、こんな小さな出来事で、一人の笑顔で、僕の中で長期化していた警察官との100年戦争に終止符が打たれました。
僕がいつか犯罪に手を染めることがあり、捕まるならこの人がいいなとさえ思います。
 
 
笑顔には、そんな力があります。
 
 
ありがとうございました。
 
おしまい。