愛をこめて花束を

よく「楽しそうに仕事しますね」と褒めていただくことがあり、僕はその度にだらしなくデヘデへ言いながらシッポを振っています。それが取引先の美人なんかだと、うれションするくらい嬉しくて、もっと仕事がんばろうと思うわけです。

 

「ストレスとか感じないんですか?」と聞かれることが多く、「もちろん感じますけど、なんとか楽しんでやってます」と答えるようにしてます。

(いやいやいや、ストレスあるよ、あるある。感じてないわけないじゃないすか)と考えながら。 

 

何年か前のことなんですけど仕事の取引先にとんでもない迷惑をかけてしまいました。僕のミスが原因です。

約1ヶ月、無休で足と頭をフル回転させました。何度も徹夜しました。円形脱毛症にもなりました。何とか鎮火させ、今後の対策を取引先に説明しに行き、謝罪し、その帰り際、偶然廊下で先方の会長さん(78歳)にお会いしました。

会長さんは全てを知っていて、僕に「この1ヶ月でずいぶんやつれましたね。ストレスもあっただろう。必死になってくれてありがとう」と言い、肩をポンと叩き「お疲れ様」と言ってくれました。

帰りの新幹線で、うれションする代わりに、少し泣きました。その時(うわぁ……あの一言で、ハゲるほどのストレス、全部チャラになったゃったよ……)と思いました。

たぶん、それが生まれて初めて感じた【ストレスが溶ける瞬間】です。

 

僕は移動中にブログを書くことが圧倒的に多いのですが、今、横浜から名古屋に向かう新幹線です。沢山のくたびれたサラリーマンがいます。僕もその中の一人です。

いつも思うんですけどね、みんな東京で一所懸命して地元に帰るんだから、もっとこう、お互いの健闘を称えるように、知らないもの同士だとしても「イエーーーーイ!お疲れーーーー!」って、ハイタッチとか乾杯すればいいのに、と思います。

脱線しましたが、一方で、ディズニーの帰りの、お揃いの服を着て、おみやげがたくさん入った大きなビニール袋を持ってキャッキャとおしゃべりする女子もたくさんいます。

眉間にシワを寄せてパソコンに向かうサラリーマンのストレスが100だとすると、ミニーちゃんの耳を付けた彼女たちのストレスは0.2ぐらいに見えるわけです。

 

そこで、ストレスとは何だろう。ということを考えてみました。

目には見えず、しかし多くの人が抱えているストレス。ストレスで死ぬ人もいると言われています。

このよく分からない正体不明のストレスと僕たちは常に戦い、ストレス解消法を模索します。

 

結局ストレスとは何か、という答えなんか出ないんでしょうけど、先日ひさしぶりに「あっ!今っ!ストレスがっ!発散されているっ!」という出来事ががありましたのでここに書いておきます。

  

 

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つい先日、送別会があって、送別される方がとてもお花が好きな方だったんですね。

寿退社ということもあって、めちゃくちゃ大きな花束を贈ろうと思ったんです。

 

お花屋さんっていいですよね。僕はお花屋さんが大好きです。お花屋さんに勤める女性ももれなく全員大好きです。

お花屋さんには幸せしかないとすら思っています。

お花を選ぶ時間や店員さんに相談する時間さえも商品です。

 

その日の店員さんもお花に負けないくらいかわいらしい人でした。

結果、ついつい長居してしまいました。

送別会19:30開始なのに気がついたら19:30でした。

 

僕は、大きな花束を抱え、スーツに革靴で、夜の栄(名古屋の繁華街)を走りました。

お花屋さんがかわいいせいで、予定より大きな花束となりました。

会場はおしゃれなお店でしたので、スーツもネクタイもいいやつです。革靴も普段は履かないピカピカに磨いた上質なやつを引っ張り出してきました。

携帯には【早く!みんな待ってます!】【今どこ?】のLINE。

既読にしながら一所懸命、走りました。

人でごった返す週末の繁華街を、走りました。

ネオンが光る中を、走りました。  

花束を抱えながら、走りました。

そのとき、思ったのです。

 

 

  

(あれ?待って!ちょっと待って!今、この状態、めちゃくちゃかっこよくない?)

 

 

 

少し寒くなってきた秋の夜。

金曜日。

デート、合コン、女子会、飲み会。

週末の夜を楽しむ沢山の人。

車道はタクシーで埋まり、赤色のテールランプが続く。

まだ11月なのに気の早いクリスマスのイルミネーション。

黒や、茶色や、ベージュのコートで溢れる街を。色鮮やかな花束を持って。

ネイビーのスーツ。ピカピカの革靴、白シャツ。

時折、腕時計で時間を確認して、交差点の信号待ちでは眉間にシワを寄せて少しイライラ、ソワソワ。

信号が青に変われば、せっかくの花束が崩れないようにと、そっと抱きかかえるように、また走る。  

 

 

 

 

 

 

 

(間違いねえ、今、めっちゃかっこいい!!) 

 

 

 

 

少し、余分に走りましたよね。

 

正直に言うと、ショーウィンドウに映る走る自分、ちょっと横目に見てましたからね。

そんで、見るたびに

(あ!夜の繁華街を花束を持って走ってる!いいね!いいよ!)

って思ってましたからね。

寄りましたもん。トイレ。

ラシックのトイレに寄りましたもん。(ラシック=名古屋で一番おしゃれなファッションビル)

ちゃんと、鏡で見ておこうと思って。花束を持つ自分の姿を。

もう、僕を見る街の女性が(あらあら)(パーティーに遅刻かしら)(うふふ)(あらやだかっこいい)(抱いて!)(結婚して!)と思っている気さえして。

 

それで、結局20:00頃に会場に入って、息を切らせて(ホントはそんなに息切れてない)、みんなに「遅い」と文句を言われながら、大きな花束を、主役に手渡しました。

 

主役は大きな笑顔で、大きな花束を、受け取ってくれました。 

 

これから冬がきます。送別会が多くなるシーズンですね。送別会に限らず、沢山のイベントがやってきます。

特に男性のみなさん。

引き受けましょう、花束の役を。積極的に。

花束の役目が無かったら勝手に買っていけばいいんです。

そして、花束を抱え、夜の街を、走りましょう。

かっこつけましょう。

いいじゃないですか、花束持ってるときくらい。

1年間溜め込んだ、僕達のストレスが、嘘のように溶けちゃいますから。

 

というだけの話でした。

 

 

 

ありがとうございました

 

 

おしまい