クレームをつけて店員さんを泣かせてしまい猛省しています

今日の出来事です。

超ノンフィクションです。

何年ぶりかで、人を泣かせてしまいました。反省する意味で、今の気持ちを正直に書きとめておこうと思いブログにします。

 

僕は、自分自身を非常に穏やかな性格だと思っています。場の空気を乱す人、横柄な態度を取る人が嫌いです。

例えば、レジでお金やポイントカードを投げるように置く人、明らかにお店に無理な要望を言う人に強い嫌悪感を抱きます。

 

僕は、全くとっていいほどクレームはつけません。

気にならない、ということもあるのですが、注文と違う料理が出れば「いいですよこれで!おいしそうだし!」と言い、通販で不良品が届いても(自分で直せないかな)と考えます。

 

穏やかな性格。言い換えると人や物事に対して客観的で、冷酷で、少し冷めたところがあります。

そんな僕が、とても熱くなってしまった出来事がありました。

 

今日、会社の後輩が誕生日だったのでケーキ屋さんに行ったんですよ。

ありきたりですがサプライズで用意しようかな、と思いまして。

 

ケーキ屋さんっていいですよね。

僕、あんまり甘いものを好んで食べないので行く機会がほとんど無いんですけど、たまに行くと(ケーキ屋さんには幸せしかない)と思っています。

 

取引先からシュークリームとかドーナツとかケーキをよくいただくんですよ。

ありがたく頂戴するんですけどね。

会社で配るんでよね。箱をパカッと開けて。

「どれがいい?」って言いながら聞いて回るんですよ。

その時のみんなの顔、最高に輝いてるんですよね。

色とりどりのケーキやドーナツを目の前に。

ふかふかのスポンジの食感。バターの香り。フルーツの彩り。ザクザクのタルト。舌から脳まで伝わるクリームの甘み。数分後に約束された甘い時間。

 

はるか昔。ケーキがまだ無かった時代。めっちゃ幸せな人が「今めっちゃ幸せ!この気持ちをっ!形にっ!残したいっ!」って形にしたのがケーキで、それが初めてケーキが世にできた瞬間であった、とさえ考えます。

 

(?)

 

脱線しましたが、そんな幸せいっぱいのケーキを買いに行ったんですよ。 

最近できたおいしいと評判のお店に。

 

けっこう遅い時間だったのですが僕の前には6名くらい先客がいました。さすが評判のお店。忙しそうです。

  

それで、順番に注文をとっていたので待ってたんですよね。 

その時、

「だから、さっきも説明しましたけど、そういうのはやってないんですよ!」

と強い口調の声が耳に入りました。

 

どうやら、お客さんが店員さんに遠方まで行くからドライアイスをもっと沢山欲しいと要求した様子。有料でもいいから、あと念のため袋も二重にして欲しいとか。

 

(それくらいやってあげればいいのに)

 

率直な感想です。

まあ、お店の決まりなのかもしれません。袋一枚のコストもばかにならないのかもしれません。僕がとやかく言うことではありません。

 

結局、そのお客さんは保冷剤も袋もあきらめていました。

 

問題は、その次。

僕の前のお客さん。60代くらいの老夫婦。

 

店員さんに注文を聞かれても、まだ何を注文するか決まってなかったみたいなんですよ。

二人で「ほら、やっぱりこのイチゴにしましょうか。いや、こっちのほうがいいんじゃないか、いや、栗もおいしそうだ、いやまだ栗は旬じゃないから…」

 

そのとき、さっきの店員さんが言ったんです。

 

眉間にシワを寄せながら。

 

店員さん「お決まりでなかったら列の最後にお回りくださーい。はい、次のお客様、どうぞ」

 

驚いたような、困ったような顔で店員さんを見る老夫婦

 

僕「…………」

 

店員さん「次のお客様、どうぞー」

 

僕「…………………」

 

店員さん「お客様ーー!お決まりですか?」

 

僕の脳の中で、何かのスイッチが入ったんだと思います。

 

僕「すいません、あの、本当に、すいません。こんなこと突然言われてびっくりするかもしれませんが、ケーキを選んでいる人に対して、そんな言い方は無いんじゃないでしょうか?」

 

彼女は、突然殴られたような、とても驚いた顔で僕のことを見ました。

20代前半の、若い店員さんでした。アルバイトかもしれません。

 

僕「いやいやいやいや。ほんと、すいません。でも、いいじゃないですか。ケーキ、選ぶの。ハッピーじゃないですか。なんで急がせるんですか」

 

店員さん「あの、何ですか?」

 

僕は決して声を荒げることなく、商談でもするように、少し笑顔で続けます。

 

僕「あなたにとっては沢山来る客の1人かもしれません。きっと今日も忙しかったんでしょう。でも、我々にとってはケーキはお祝い事とか、特別な物なんです。だから、もっと、余計なお世話かもしれないけど、そのことを忘れないで欲しいんです」

 

店内が静まり返り、僕に視線が集まるのを感じます。

 

僕「僕は、普段接客の悪い店員さんにクレームをつけたりしません。みなさん人間ですから嫌なこと、つらいこと、ムカつくこと、あると思います。いいんですよ、しょうがないんですよ。多少は。でもね、ケーキ屋さんじゃないですか、ここ。居酒屋とか、ラーメン屋とかじゃないんですよ。ここ、すごく大事なとこなんです。みんな、ケーキを選ぶときってワクワクして選んでるんです。自分で食べる分がこれで、あの人はこれが好きそうだな、あの子はイチゴが好きだったな、とか。」

 

店員さんは険しい顔でこっちを見ています。

 

僕「ケーキはぜいたく品です。無くても生きていけます。もっと言えば最近、コンビニのケーキ、めっちゃ美味いんですよ。安いし。でも、そんな中でもちゃんとしたケーキ屋さんにケーキを買いに来てる。これって、特別なことなんです。僕は会社の後輩が今日誕生日で、それで、ケーキ買いに来ました。一年に一回なので、近所のケーキ屋さんで済ませないで、ネットで評判のいいケーキ屋さんを調べて、この店を選んで、来ています」

 

店員さんの顔から表情が消えていくのが分かります。

 

僕「だから、もしかしたら僕のわがままかもしれないんですけど、ケーキ屋さんとか、お花屋さんとかには常にニコニコしていて欲しいんです。本当に勝手なことを言いますけど、ケーキだけじゃなくて、悩んでいる時間さえも商品だと思うんですよ。」

 

そのとき、大粒の涙が店員さんの目からポロリと流れました。

 

まさか、泣かれるとは思ってなかったです。

僕も急にトーンダウンです。 

 

僕「あの、すいません、クレームというか、そんなつもりは無かったんですけど、さっきのお客さんも、袋とか、ドライアイスとか、わざわざ遠いところから、いや、どこから来たのかはわかんないですけど…」

 

口が、混乱しています。

 

店員さんが泣きなが僕をじっと見ています。

口をきつく結ぶように閉じて。

その場をはじめてみた人からすれば、完全に僕が悪です。店員さんにクレームつけて泣かせている以外の何者でもないです。

 

実際、そうだったのかもしれません。

その場を治める術を見失った僕。

 

その時、救世主が現れたんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

老夫婦「注文、決まりました!イチゴのやつください」

 

僕「確かに!」

 

 

なんなんすかね。

「確かに」って。

ほんと、今思い出しても恥ずかしさしかないです。

 

 

結局、その場は、店長(?)が奥から出てきて、老夫婦とか僕の後ろに並んでいたおばちゃんとかが僕をかばうように経緯を説明してくれました。

店長さんはプロでした。

混乱した若い店員さんがこれ以上傷つかないように奥に引っ込める配慮もあり

「私の教育不足です」「私からよく叱っておきます」と。

店長さんは老夫婦に謝罪し、僕も店長さんに謝罪して、ケーキを買って帰りました。

店長さんからケーキの割引の申し出をいただきましたが丁重にお断りしました。

 

泣かせてしまったことは反省しています。猛省しています。

 

でも、誰にも言わないですけど、ここには正直に書きます。

 

僕が、本当に反省すべき点は途中から、しゃべっている途中から、気持ちよくなってしまったことなんですよね。

スラスラ喋ってる自分に酔ったんですよね。

 

仕事で、プレゼンテーションを行うことがあります。数人規模から、多いときは約100人の前で。毎回死ぬほど緊張して、夜遅くまで準備をして、練習を繰り返すこともあります。プレゼン当日、だんだんノってくるんです。その場が生きてくると。

わざとアドリブを入れたりするんですよね。

 

だから、あの場では、本当に、僕が悪でした。

横柄な店員さんに文句を言った勇気ある人ではないのです。

横柄だったのは僕です。

  

証拠に、店員さんが泣いたとき、口は混乱しましたが脳ではこんなことを考えてました

 

(おい!ひきょう者!泣くな!まだ話の途中だろ!聴け!)

 

自分のプレゼンの場を邪魔されたと勘違いしてますね。最低です。

 

この話を会社の後輩達にしたら言われました。僕の叱り方には問題があると。

 

「理路整然と諭すように叱られる。思いっきり怒鳴られたほうがいい」

「逃げ場をどんどん無くされる」

「笑顔が怖い」

「彼女できない理由が分かる」

「彼女ができても彼女がかわいそう」

「ドS」

 

 

本当に反省しています。

許されるなら、あの店員さんに直接謝りたいです。

 

でも、だけど、どうか全国のケーキ屋さん、あとは花屋さんとか。笑顔で。どうか笑顔で。可能な限り、笑顔で。

 

ケーキはもちろん、選ぶ時間ももちろん、ケーキを入れる四角い箱とか、袋とか、ケーキ屋さんへの道も、そしてあなたの笑顔も、幸せな時間の一部なのですから。

 

ありがとうございました。

 

おしまい。

 

 

【お知らせ】

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朝日新聞「A-port」 ウイのオンラインサロン

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税込み1512円と決して安くはない価格ですが、ボリューム満点の256ページ(多くの本は200ページ前後が多い)に文字をぎゅうぎゅうに押し込めました。Twitter発の本によく見られる「文字が少ない余白の美しさ」は求めず、とにかく一行でも多くの文章を押し込むことに特化しました。本の紹介は下記より

 

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