僕は静かに怒れるおじさんである

自分、38歳の未婚の男性であります。

時々言われる「38歳には見えないですね~」というお世辞は相手がびっくりするくらい素直に受け止め、デヘデヘしながらも自分が「お兄さん」や「若者」にはカテゴライズされない事がずいぶん増えたなと実感しています。

 

もしかしたら同性代の中には眉をひそめる方もいるかもしれませんが、38歳はおじさんです。

50代、60代の方々から見ればまだまだ若いのかもしれません。でも、僕の中で38歳はおじさんなのです。若者カテゴリーの年長者よりもおじさんカテゴリーの最年少に籍を置いた方が気持ちが楽、という理由もあります。

そんなまごうことなきおじさんこと、僕。

最近、新たに芽生えた「怒り」があります。

 

僕(おじさん)は、おじさんに怒っています。

僕だけじゃない。

おじさんになって分かったことなのですが、世の中のおじさんは、おじさんに怒っているのです。とても静かに。

人間は歳をとると、かわいいと思える対象が増えていき、色々なものを許せるようになります。他人や自分への許容範囲がグッと広がります。理想と現実の間に納得できる着地点を見つけ、ヒラリと着地できるようになるのです。それはとても人生を楽しくする変化で、実際20代よりもアラサー、アラサーよりもアラフォーになってからのほうが人生の楽しさが増し、難易度は下がりました。

それなのに、一部のおじさんに対する怒りは増えるばかり。

 

女性蔑視をするおじさん

セクハラ・パラハラするおじさん

痴漢で捕まるおじさん

歩きたばこをするおじさん

身だしなみに気を使えないおじさん

駅で無意味に女性にぶつかるおじさん

その他、様々な愚行を行うおじさん

 

世の中には様々な老若男女のカテゴリーがありますが「おじさん」が一番目立って悪いことをしている気がします。 

そんなおじさんの存在のせいで、この世には

「おじさんはどれだけ叩いても大丈夫。なんせ、あいつら頑丈だし、強めに叩かないと気付かないから。おじさんは強く叩こう」

という見えない暗黙の了解が生まれているのです。「お兄さん」から「おじさん」に人生のフェーズを移して初めて気付きました。

これは、脅威です。

僕たちおじさんは、本当はびびっている。

何食わぬ顔していますが、まるで潔癖症の世界を生きる細菌です。

歴史的に見れば確かに成人男性は昭和や平成のはじめくらいまでは社会的強者だったのかもしれません。

実際、今でもそのことにしがみついている残念なおじさんもたくさんいます。

しかし、一定数のおじさんはそこからは脱却しているつもりだし、謙虚に、慎ましく、人生と呼ぶよりは生活と呼んだ方がしっくりくる毎日を一所懸命生きているだけなのです。

 それぞれが「人柄」とか「愛妻家」とか「仕事ができる」とか「清潔感」とか、何かしらこの世をスイスイ泳ぐための長所を必死に掴もうとしている。

 

結果「良いおじさん」も増えたと思います。

身だしなみにも気を使う人だってずいぶん増えたと思います。

臭いだけではなく、スキンケアをするおじさんだって増えているはずです。

中にはフェミニズムジェンダーについて深く理解しようと勉強しているおじさんだっています。

無意識であっても、悪意は無くとも、性別年齢関係なく差別は無くなさないといけないのですから。

 

それなのに!

毎日のように!

たくさんのおじさんが!!

テレビやネットのニュースで耳を塞ぎたくなるような発言を繰り返すわけです!!

まちがったSNSの使い方で世間を賑わすおじさんもいるし、何歳になっても性欲をコントロールできないおじさんもいます。

 

そんなおじさんのせいで僕たちおじさんの肩身はどんどん狭くなるし、何を発言するも、行動するも、実はいつも必要以上におっかなびっくり。

いつだって横目で周囲をチラッと見て、自分の立ち位置が安全圏からはみ出していないか確認する必要があるのです。

 

だから僕は、僕たちは、怒ってるのです。

そう、僕たちおじさんは、怒ってるんですよ。おじさんに。

ずっと、ずーっと怒ってますよ。

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かと言って、おじさんに怒りの声や主張を掲げれば「おじさんどうした」と揶揄される。

そして、こんな社会に誰がしたと考えれば、それも一部のおじさんなのです。

一部の勘違いおじさんを駆逐できるのは、おじさんのはず。

しかし、勘違いおじさん達を変えることはできません。なんせ、話が通じないのですから。彼らは最も近くて遠い国の住人なのです。

ここに大きなジレンマを感じています。

 

そんなジレンマを片手に、今日もおじさんに対する怒り、自分の無力さに対する悔しさは増すばかり。

僕は、駅で無意味にぶつかるおじさんを目撃してしまったら、本当はハルクみたいに怒りたい。

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怒れる緑のおじさん・ハルク。力が、欲しい。

ここまで書いて気付きました。さっきから書いているこの怒りの根源、自らの立場を守るためのエゴなんでしょうね。いかんいかん。

 

すべて僕の狭い世界で、僕が感じたことですが、これからも僕はいつもニコニコ笑って、静かに怒れる清潔なおじさんでいようと思います。密かにどうやったらおじさんの敵であるおじさんを排除できるかを考えながら。それがおじさん1年生の役割だと思います。 

 

何回「おじさん」って書いたか分からず、とっくの昔に僕の中でおじさんがゲシュタルト崩壊しているのでこの辺で。

 

ありがとうございました

おしまい

 

 

先週『38歳、男性、独身』というタイトルの書籍が発売されました。僕のSNSのフォロワーの7割は女性で、おそらくこのブログの読者もほとんどが女性。しかし、書籍もタイトルに『男性』という文字が入っています。もちろん、女性読者も意識して書きました。でも、今回の本は、世の中の静かに怒るおじさんにも届いてほしいなと考えながら書きました。僕のようなおじさんに届きますように。

そして、いつかそんなおじさんと友達になって、飲酒ができますように。

子供も、お年寄りも、女性も、おじさんも、生きやすくなりますように。

あと、既婚者も独身者ももう少し生きやすくなりますように。

新刊、よろしくお願いいたします。

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