僕たちには『名もなき関係』が必要なのかもしれない

『大豆田とわ子と三人の元夫』が終了してから1週間が経過しました。

我々は初めて大豆田とわ子にも、3人の元夫にも会えない火曜日を迎えました。 さみしいですね。

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外れた網戸が戻せないことで有名な大豆田とわ子

とわ子が子供の頃、母親との会話です

母「とわ子はどっちかな。ひとりでも大丈夫になりたい?それとも、誰かに大事にされたい?」

とわ子「ひとりでも大丈夫だけど、誰かに大事にされたい」

 

テレビの前で思わず「そうだよね」と声に出してしまいました。

独身も、バツイチも、みんな一人でも平気なのです。

きっと結婚した人達の多くも一人でも平気だけど二人のほうがよかったから結婚したんですよね。

僕たちは皆、一人でも大丈夫なのです。

だって、これまで一人で平気だったのですから。

だけど、誰かに大事にしてほしい。

「もう、ひとりは嫌なんだよ。限界なんだよ。誰かに頼りたいんだよ。守ってもらいたいんだよ」

とわ子がこう嘆いたように。

僕たちは一人でも大丈夫なはずだけど、本当は大丈夫じゃなくて。

誰かに特別に想ってほしい。

守ってほしい。

優しくしてほしい。

気にかけてほしい。

思い出してほしい。

触れてほしい。

共有してほしい。

笑いかけてほしい。

今日のできごとの話をしてほしい。

将来の約束をしてほしい。

でも、そのことを明確に相手に要求できない。

だってそれは、その人の、一人の大人の人生を変えてしまう「要求」だから。

そんな大それた要求を明確にしないまま、どうにか叶えるために、僕たちは精一杯、人にやさしくするのだと思います。一所懸命、愛情表現をするのだと思います。

そして、それらの行為の裏側にはいつも「こんなにしているんだから」という下心や期待が存在するのです。「一人になるのは嫌だ」という恐怖が存在するのです。

 

時々、その下心や期待が大きくなりすぎてしまって、そのことに自分や相手が気付きながらも、それを止めることができない。

止めてしまった瞬間、自分か、相手のどっちかがその場にいられなくなるような気がしてしまうから。

そんなおっかなびっくりな恋愛が、一人でも大丈夫なはずの僕たち大人の恋愛でもあります。

そして、下心なき無償のやさしさや、見返りを求めぬ、ついつい溢れ出てしまったような愛情表現こそが「愛」と呼ばれるものなんだろうな、と最終回を見ながら思った次第です。

 

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3人の元夫と一人娘に囲まれがちな大豆田とわ子

 

同時に、大人が一人で健全に生きるには「他者との繋がり」は絶対に必要だと感じました。

人間は他人の目を気にしなくなったとき、自力で歩けなくなったとき、そして他者とのつながりがなくなったとき、世界は急激に縮小し、一気に老け込んでしまうのです。

他者とのコミュニケーションでしか得られない喜びが確かに存在します。その喜びを通じてしか感じ取れない存在意義や尊重や尊厳もあるのです。

その「他者との繋がり」は、もちろん仕事の関係でも良いのですが、できればもっと近い関係が良いですよね。

もちろん友人でもいいし、恋人でもいい。

でも、もっと曖昧でもいいと思うのです。大人だから。

元恋人、曖昧な関係の異性、元不倫相手、元婚約者、大親友の彼女のツレ、許し合えた友の愛した人でさえも。そして元夫だっていいと思います。

名も無き家事があって、名も無き料理があるように、一応「友人」という括りに入れられないこともないけど、厳密には違う関係。

そんな「名も無き関係」っていうのが、大人が生きる上でこれまで以上に必要になってくるんじゃないかなと思うのです。

 

もちろん、関係は健全なほうがいい。

不倫は悪だし、セフレは不健全な心境になるのであれば関係を切った方がいい。今の恋人に隠さなければいけない関係は不健全だと思います。だって、そこに引っ張られ、本来の目標や目的や大切にすべき人が曖昧になる人がたくさんいて、抱いた抱かれたの相談が絶えないから僕はこれからも「不倫は悪」とか「不健全なセフレはダメ」と言い続けると思います。

でも、そんなことは百も承知の上で、「普通の結婚、普通の恋人、普通の友達」という「普通」が陳腐化している今、「説明すると長くなる関係」や「一応友達っていうカテゴライズだけど厳密には違う」とか、そんな「名もなき関係」について考え直さないといけないと思うのです。

 

ドラマ終了から1週間経過するのにまだうまく言語化できませんが、例えば

「先週、一緒にカフェにいた人、誰?」

「ああ、あの人は友達」

「どんな友達?」

「なんて言うか、厳密には友達じゃないんだよね。元上司であり元不倫相手であり、元婚約者。昔、勤務していた会社の上司で、8年前に不倫してたの。奥さんと別れて一緒になろうって言ってくれたら、口約束だけど元婚約者でもある。でも、色々あって彼は離婚したけど私たちもお別れしたの。その後、私は転職して音沙汰無し。それが、7年も経過した去年のある日、偶然飲み屋で再会して、そこからは友達関係。たまにお昼にお茶している。彼、仕事で有益な情報たくさん持ってるんだよね。もはや身体の関係は互いに求めていないし、応援とか支援とかいう類の重みも感じない。そういう関係を何と呼ぶと問われると、やっぱりそれは『友達』かな」

とか、そんなめんどくさい関係を力業で健全に成立させるスキルが今後大事になってくるのかなと思うのです。

「名も無き関係」を成立させるスキルこそ、一人で生きる僕たちの孤独とか、共存とかの悩みに対して強さを発揮するのではないかと感じています。

本当に良いドラマでした。 

 

余談ですが、僕は大豆田家の網戸が外れていたらそっと直します。

そのことにとわ子が

(あれ、網戸が直っている。直してくれたのかな)

って気付いてほしいなと願いながら。

でも、それに気づく前にきっと網戸はまた外れるし、そもそもとわ子は網戸を直せる人を選ばないですよね。

3人の元夫、確か全員網戸直せませんでしたもんね。

 

あんまり書くと「配信で見る予定だったのに」という方のネタバレしてしまうので、このへんで。

そのうちアマプラとかに出ると思いますので、まだ見てない人はぜひ。

 

ありがとうございました。

おしまい

 

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ありがとうございました。