ベランダにね、あるんですよ。
ブラが。
ただいまって暗い部屋に帰ってきて、洗濯物を取り込もうとベランダに出たら、あるんですよね。
はじめは自分の洗濯物がハンガーからずり落ちたのかな?なんて思って拾い上げたんですけど、全然しっくりこないんですよ。
拾った感じが。
フワッとしてるんですね。
まるで羽。羽のような軽さ。
それで、ペロって広げてみたら、ブラなんですよ。
多分、僕、ハニワみたいな顔になってたと思います。 はて?って。
「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ…まったく理解を超えているのだが…」
一瞬のポルナレフ状態を経由してよく考えてみたんですけど、
問題は、このブラが何の目的で僕の部屋のベランダにあったかっていうことなんですよね。
「彼女のやつかな?」って思ったんですけどね、あれ?僕、彼女いましたっけ?って。
否。
じゃあこれ、僕のブラでしたっけ?
(男の人が装着すると何か優しい気持ちになれるらしいですよね。ブラって。)
否。
じゃあこれは僕の知らない誰かのブラですね。
ここではないどこかから来たブラなんですね。
完全に外来種なんですね。
それでね、ベランダにあるっていうことはね、飛行してきたことが考えられますよね。
ふわり、ふわり、と。
なんて言ったとか言わないとか。
そしてね、このね、僕のベランダにお呼ばれされたブラ、穴が開いてるんですよ。
ぽっかりと。真ん中に穴が。
レースなんかは1cmも付いてなくて、全体の雰囲気はすごいスポーティーなんですよね。
色もグレーでスポーティー。
できれば浅尾美和、オグシオ、せめて松本薫くらいスポーティー感でいきたいなと思ってたんですけどね。
長年女子サッカー界を率いてるくらいスポーティー。
霊長類最強と言われるくらいスポーティー。
そして最大の特徴。センターには穴があるんですよね。穴。
生まれてから今日まで拝見したブラはさすがに1枚や2枚ではありませんがね(おかんのブラ含む)、完全にニュータイプ。
なんなん?この穴。何を収納するん?
たぶん、超ひわい。もう、僕の知らない世界。未体験ゾーン。
きっと一部上流家庭の選ばれし者だけが許された禁断の快楽。
通常の性行為では満足できなくなった性異常者のみが知る快楽の向こう側。
誰が何の目的で?敵か味方なのかも分からない。
とにかく、このセンター穴空き霊長類最強ブラ、僕には荷が重い。身に余る。耐えられない。
このブラを取り返そうとする追っ手から追われる日々。
さて、どうやって手放そうかな、と。
「すいません、下の階の者ですけどね、へへへっ、センターに穴が開いたブラ、飛ばしませんでした?ぐへへへへへ」
却下。
「もしもし、警察ですか?ブラ拾ったんですけど、どうしましょう?いや、盗んだわけではないです。本当です信じてくださいこんな顔してますけど。そもそも僕は女性に興味なんてsfほ;rひふぉ;wfhwりお;hf;」
却下。
でも、捨てるわけにはいかないし。
出した答えがマンション管理会社。
そして、事無きを得たわけです。
…数日後
マンションのエントランスに貼り出された【拾得物のお知らせ】で知ったんですけどね、ナイトブラっていうんですね、こういうやつ。
ね?開いてますよね。穴。